1970年代から一度はみてみたいと思っていた井上陽水のライブ。当時住んでいた道北の市でほぼ全盛期のかぐや姫、吉田拓郎はみていましたが陽水は未見。初期の4枚のアルバムにかぶれていて、いつか実物に......の期待はなかなか実現せぬまま二十有余年......... 帯広でコンサートが開かれるとの情報を得て、カミさんに何度も電話をかけさせて、やっとチケットを入手。このチケットが2001年の私へのバースディ・プレゼント(そんな年でもないんですが)になったのでした。 2001年の全国ツアーは5月30日に東京・パルテノン多摩を皮切りに、2ヶ月に渡る予定でスタートしました。ツアー初日の5月30日は全曲がカヴァーである新アルバム「United Cover」とフォーライフで発表した全アルバムのBox Set「Re-Masters」の発売日でもありました。 さて、6月28日当日はツアー開始から約1ヶ月、ちょうど折り返しとなり、メンバーの息も合い、ステージングもこなれてきたはずとわくわくしながら出掛けました。会場は帯広市民文化ホール、キャパは1500強。席は3階でステージをすり鉢の底に見下ろすような感じです。定刻には満席状態、50〜60才と見受けられるオーディエンスもたくさん。 照明が消え、ステージ上でスタンバイするメンバーがおぼろに見えるだけ。最後に陽水が登場。おぉ、本物だぁ、動いてる........でもちっちゃくしか見えないのでちょっと残念。オープニングは最新アルバムから「銀座カンカン娘」。カヴァーアルバムを出したことも知らずに、字だけ見ると「え?陽水のコンサートで銀座カンカン娘?」ってぎょっとしそうですけど..........なかなか良い味を出していました。 「Make up shadow」のイントロにムフフフフ。発表当時けっこうカラオケで歌いました。サビの部分、とくに「♪イライザブルーの〜〜」のヴォーカルにはぞくぞくしました。陽水の声って1970年代と遜色ありませんね。声量も豊かだし、一聴して陽水とわかる硬質のミドルトーン。惜しむらくは、ハードなロック・チューンでは他の楽器のヴォリユームが大きすぎて、陽水の声が聞こえづらいこと。席の場所が関係していたのかもしれませんが。 帯広には29年ぶりのコンサートだそうです。1972年には「かぐや姫と泉谷しげるといっしょだったかな?」と話すと会場から「猫も〜〜」の声。「あ〜、猫もね........犬は......犬はいなかったな。あのときは雪が降って.........」、会場「夏でしたぁ〜」、陽水「ハハ、夏でしたか」その後、帯広の名産の話題などがあり、「..........豚丼ね。次の曲も関係が.......」と、歌い出されたのが「コーヒー・ルンバ」。これも最新アルバム「United
Cover」からで、「アラブのエライお坊さん〜」なんて非凡な歌詞が出てきて、当時としてはエキゾチックだったんでしょうか。一転してキーボードのスペーシーな凛と冷えた星空を思わせるイントロが...........「帰れない二人」これは絶対にライブで聞きたいと思っていた1曲。「氷の世界」のアナログ盤でもよく聞いていましたが、ビデオ版「クラムチャウダー」でライブ映像を見てから、余計に焦がれていた1曲です。上述したようにハードエッジな曲はヴォーカルのバランスが良くなかったのですが、バラードではそのようなこともなく、陽水のヴォーカルを堪能できました。最後のヴァースの「♪〜もう、星は帰ろうとしてる 帰れない 二人を 残して〜」に溜め息。 ここでバンドのメンバーは一度引き揚げ、アコースティックギターを抱えた陽水一人がステージ中央に。あのセフィーロのコマーシャルを彷彿とさせるトーンで「お元気ですか?」と話しかけ、すこし沈黙の後、はにかんでまた、「お元気ですか」。アルペジオをつま弾きかけて、またトークへ。「熊を見たことがある人ってどのくらいいますか?」などと会場に振って、「動物シリーズで.......」と歌い出したのが「カナリア」。ついでコードを探しながら、「雪の降る街を」。「さっき楽屋で練習してたんです。.........それにしてもすごい歌詞ですね。『ゆきのふるまちを〜 おもいでだ〜けが とおりすぎてゆく〜』んですからねぇ......」と。各地でご当地ソングをうたっているようで、今回のツアーでは横浜で「青い目の人形」、福岡で「炭坑節」、四国で「金比羅ふねふね」、札幌で「毛ガニ(?)」など。 さて、コンサートもいよいよ佳境に入ってまいりました。「とまどうペリカン」は陽水の弾き語りで始まって、バンドアンサンブルへ。「♪あなたライオン〜」のフレーズはいつ聞いても切ないですのぅ。「奥田民夫ってミュージシャン知ってます?」と会場の笑いを誘い「手引きのようなもの」を演奏。最初聞いたときは、ピンとこない曲だったのですが、聞き込むほどに味わい深くなる曲ですね。奥田民夫との共作アルバムに収録されていましたが、「United Cover」にセルフカヴァーで再収録されています。 「ミスキャスト」は沢田研二への提供曲でスタジオ盤には未収録。ライブビデオ「クラムチャウダー」を見て、カッコイイ!マイッタァ!と思っていました。今回の演奏も迫力たっぷりでカッコよかったです。続いて6月の北海道にはぴったりのイメージの「自然に飾られて」。コンサートの中盤〜後半はわりと夏を感じさせる曲が多く配置されていたようです。コマーシャルで一躍脚光を浴びた「花の首飾り」。我が家では、その昔、リアルタイムでタイガース盤(加橋かつみ)が流れていました。それもヘビー・ローテーションで。6才上の姉の趣味だったものですから。この曲に陽水のヴォーカルはできすぎというぐらいに、ぴったりはまってますね。「♪わたしの首に〜 かけてください〜〜」いやぁ〜たまらん。「We Are 魚」って、何て読むんだろうと「Negative」の発表当時、思ってました。「さかな?」、「ぎょ?」ってね。最後のヴァースで「うお」ということが明らかになるのですが..........歌い終わって「『ウィ アー ウオ』という曲でした。」と陽水もコメントしていました。 ここでバラード系の曲から、ハード・チューンを連続3曲。「My
House」 〜「氷の世界」〜「ビルの最上階」。今回のツアーでもここの曲順はきっちり固定されていて、ハイライトとなっています。どんどんテンションが上がっていきますが、70年代のオールド・ファンとしては「氷の世界」のイントロでハーモニカがかぶさってくる部分で、「ライブで聞けるなんて.......」と目頭が熱くなりそうでした。28年前の曲という古さを全く感じさせない普遍性をもった曲なのですね。ヴォーカルと楽器のバランスの悪さがここでも..........歌詞を聴き取るのはかなり困難でした。 アンコールの1曲目は「星のフラメンコ」。正面のスクリーンに歌う陽水の横顔が映し出されます。冒頭の「♪すきなん〜だけど〜」のを聞いただけで、陽水が気に入って楽しんで歌っているのが伝わってきました。原曲以上に陽水のヴォーカルはジャストフィットしているんじゃないでしょうか。(「ジャストフィット」も聞きたかったなぁ)2曲目は「二色の独楽」に収録されていた「Happy
Birthday」。当時は気にもとめていませんでしたが、ライブ映えのする曲ですね。重いリズムが心地よい。「♪バカだなぁ〜〜」の歌詞にニヤリとしました。
そして3曲目は「夢の中へ」。陽水クラシックスのなかでもエバー・グリーン・ミュージックの最たるものでしょう。う〜〜ん、至福の時。最後のヴァースの「♪夢の中へ」の部分はハイトーンで歌ってくれることを期待したのですが、それは贅沢というもの? たっぷり2時間半堪能しました。5月30日の初日から、インターネット上ではツアーの様子が次々とアップされました。その日その日のセットリストも大部分がアップされ、その変遷が手に取るようにわかりました。コンサートに行く前から、演じられる曲がわかってしまうというのも興を削いでしまう面がありますが - 「氷の世界」など「やるぞやるぞ」と待ちかまえているよりは、「え?こんなのもやるの?」という方が驚きがあったでしょう - 、90年代の陽水体験がほとんどない私には、最近の曲の動向を知る上で役に立ったと思っています。 今回のツアーメンバー
帯広公演セットリスト
今回のツアーで帯広では演奏されず他の会場で演奏された曲
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